「GAME-AAN、地表面フラックス観測合同Meeting」議事録


 日時:1996年10月18日13:00ー10月19日夕方
 場所:18日:筑波大学加速器センター(地球環境変化特別プロジェクト)
    19日:筑波大学水理実験センター

議事内容(以下、敬称略)

 安成(筑波大): 趣旨説明
*具体的に計画の詳細についてつめる。(予算、人材、カウンターパート)
*長期にフラックスを測定するのにはどうすればよいか?
*AWSの数はどのくらい必要で、scienceとしてO.Kか?(予算と研究の両面で)
*日本で観測データをモニタリングする方法は?
*各地域の集中観測においてAANのAWSも使用するのか?
*各地点(地域)の現状。
*共通の目標(目的)とデータ収集、共有等
*観測システムの維持(地域班との関連、カウンターパートの関係)
*衛星データとの併用、データの検証の為に観測に求められることは?
*モデルから観測への要請。
*4次元同化データ作成側から観測への要請
*GAME-AANの文部省予算について
 H8 - 2000万円
 H9 - 9000万円
 H10 - 4500万円
*長期メインテナンスのサポートはAPN/AAN(環境庁)

1.GAME研究地域における地表面観測
1-a.大畑(滋賀県立大):シベリア班の現状
*タイガ帯に既に30mタワーを建設済み。ただし、予算不足でセンサーは当初計画し
たもの全部は付けられなかった。
*ツンドラ帯にAANで開発中のAWSを設置する予定(1998年)。とくに地温、土壌水
分と凍土の融解に注目
*ロシア科学アカデミー、宇宙物理研究所のサポート。


1-b. 田中賢治(京都大):中国班の現状
*森林、水田、畑、水体の4種類の地表面で季節毎に1週間程度の
 集中観測を  実施(4つの地点を選定済み)。
*1997年夏までに2地点(森林、水体)のポールを建設予定。
*集中観測はワイ河水利委員会の全面的なサポート
*中国側のGAME-PAMの引き受けは寿県気象局に決定
*中国の水文学者のフラックス観測への参加の要請。
*IOPに萬城地理研究所のフラックス観測機器を寿県に移設して、
  GAME-PAMと同期観測


1-c. 鈴木(東京大):熱帯班の現状
*今年の11月までに50mのタワー建設予定(40mの森林中)、'97年5月にセンサー
 設置予定。
*120mのEGATタワー(microwave中継用)の利用O.K。
*観測予定の水田の利用にあたっては、Irrigation department,meteorological
departm  entの協力。
*データの欠測がなるべくないようにする。
*土壌水分の観測(11ー12月の無降水の時期に土壌水分が乾ききるまでのモニタリ
ング) 複数の地点で移動観測の予定もあり。
*'98年は技術移転の為の作業をして、'99年以降は完全に現地の人による観測を行
なえるようにする予定。


1-d. 小池(長岡技術科学大):チベット班の現状
*ドップラーソーダー、タワー、係留気球、ゾンデによる観測。
*高原の中央部にメソ観測ネットを設置予定。(可能なら通年)
* TIPEXとの連携。
*メンテナンスの頻度は、AWSは年1回、メソ観測ネットは10日に一回の予定。


1-e. 宮崎(筑波大):AAN(モンゴル)班の現状
*北部に既に設置済みのアンデラーのAWSと、南西部に設置予定のPAMの2台での
 観測予定。
*新たな設置場所を含めてカウンターパートは自然環境省。
*AWSのメンテナンスは基本的に現地の測候所に委託予定。


 2. 地表面観測データに対するユーザーからの要求。
 
 2-a. 小池(長岡技術科学大):衛星データからの要求
 *広域の代表的な地表面熱収支、放射、乱流フラックス。
 *衛星データのアルゴリズム開発に使用可能なデータ。
 *均一なところで20km×20kmの土壌水分量、植生のデータを観測する。
 *SSM/Iは特に気温の低い地域において,砂塵と雪の区別がつかない.植生の
 ある地域では土壌水分の推定はできないが,裸地や草原ではある程度可能で
 ある.
 
 2-b.  山崎(東北大):一次元モデルからの要求
 *放射量の観測の誤差は影響大なので正確な観測が必要。
 *通年の気温、風速、湿度、日射量。
 *IOPでの少なくとも1週間の確実なフラックスデータ。
 *各季節でのHとLE。
 *樹高と葉面積のデータ。
 
 2-c. 木村(筑波大):地域モデルからの要求
 *メソスケールからの観測に対する要求は研究者によって異なる。現状では
 地域モデル側からのまとまった要求は出せる状態にない.
 *個人として興味のある現象を扱うには、日射と地表面温度の日較差、気圧、
 降水量、レーダーデータなどが必要である。
 *GAMEの研究に対応するため,日本では今後Simple Model(cf.局地循環モデ
 ル)から
 Comprehensive Model(cf.JSM)に移行する必要がある.今,研究者はこの移行
 に関して大いに労力を払っている.今後、モデル側と観測側の接点を増やす
 必要がある.
 
 
 2-d. 岩崎(気象庁)[書面にて参加]: FDDAからの要求
 *地上気圧(精度4hPaが最低条件、1hPa以下が望ましい。センサーの標高が
 必要)が唯一4DDAの入力に使えるデータである.
 *面的な降水データ、フラックスなどは検証データとしては重要である。
 
 
 2-e. 安成(筑波大):解析的研究からの要求
 *地表面状態の把握が重要。
 *土壌水分+植生データ(凍土、積雪、融雪、土壌水分)
 *日変化と季節変化の解明
 
 3.観測方法と解析方法
 3-a.地表面フラックス
 
 塚本(岡山大):PAM IIIの試験観測の結果が紹介された。
 横風成分による、w成分の観測値への影響。wプローブ間の音波が横風によっ
 て迂回するので、横風によって、プローブ間における音波の到達時間の遅延
 を生じるが、今後こういった問題に対処する必要がある。なお、PAM IIIの場
 合は、遅延の影響はすでに搭載されたプログラムのアルSリズムによって対処
 されている。bandpass covariance 法については現在のアルゴリズムの改良
 がNCARで進められているが、現状では十分でないことが示された.
 
 青木(東京農工大):
 *熱電対による乾湿球を用いた観測で、熱収支ボーエン比法を用いて計算し
 た。
 *朝方は蒸発が少なく貯熱量が多いが、昼間になると貯熱量が少なく蒸発が
 多くなる。
 *植生のパラメータを測ることは重要。
 
 杉田(筑波大)
 *PAMに付けた2高度の温湿度センサー、IRTを使ったフラックスの推定結果
 が示された.温度センサーを使ったプロファイル法、バルク法は渦相関、
 bandpass cov.法の結果と良く合うが、湿度センサーを使うプロファイル法、
 ボーエン比法は精度が悪いことが示された.また、熱収支を考慮する場合、
 水田の水体の貯熱量が非常に大きくそれを精度良く見積もることが全体の精
 度向上につながることが強調された.
 
 大手、田中克典(京都大)
 *タイでのATIと海上とのSATの観測値の比較.フラックス、分散、平均とも、
 両者は良く似た値を示した.
 
 
 3-b. 早坂(東北大):放射観測
 *地表面の放射には雲が重要。
 *全放射計は短波放射の影響が大きい。とくに日の出、日の入りの太陽高度
 の低い時の放射が影響。
 *直達日射にはバラツキがほとんどなかった。
 *雲全体は冷却効果があり、絹雲は中立、積雲は冷却効果がある。
 *いくつかの測定器の比較検討の結果、赤外についてはEppley PIR が優れて
 いることがわかった.日射についてはさらに検討が必要であるが、基本的に
 は各メーカーのキャリブレーションの違いによる差異が大きい.同じメー
 カーの測器同士は良く合う.日射計のキャリブレーションのためには準器を
 持って各サイトを回り、それぞれ数日程度データをとればよい。
 
 
 3-c. 開瓣(広島大):土壌の水分量と物理特性パラメータおよび植生状況の
 観測・解析
 *タイでの土壌水分観測では高水分測定、再現性に若干の問題あり。全般的
 にはO.K.
 *AWSサイトの土壌情報の代表性の検討の必要性あり。
 *移動観測はどのくらいのグリッドで行なったらよいか?
 
 3-d.上野(滋賀県立大):雨量、一般気象
 降雪をとらえるためと同時に強度の弱い降水を補足するために、ウェイング
 式のETIを少なくとも寒冷地では採用したい。
 
 4.データの利用について
 4-a. 鈴木(筑波大):AANでの衛星によるデータ収集
 技術的な面では気象庁、NCARとの交渉が終わり,今後公的文書の作成に入る
 ことが説明された。年内の業務協定の締結を目指す。GMSデータ転送に用いる、
 メッセージフォーマットの最終案が資料として配布された。また,3月までに、
 GMSデータ転送の試験を鳩山、ハワイにおいて計画されていることが説明され
 た。
 
 5.その他
 5-a. 上野(滋賀県立大):AWS寒冷地テスト
 *付けられるセンサーは全部付ける.
 *シベリア:-50Cでの試験をリクエスト.
 *白山工業等の民間団体に試験を依頼する可能性も検討する.
 *北海道大学低温研究所の人工気象室で試験する.また,北見で冬季,屋外
 観測試験を実施する.(大畑) シベリアでの観測での機器の低温環境試験につ
 いて.電源は太陽電池と蓄電池.プロパン電池の可能性→50Wで3kg/dayの燃
 料が消費される.ボンベ一本60kgであるので,20日は持つ.
 *詳細は上野を中心に案を練り11月末あたりから実行.
 
 5-b. AAN の年度計画
 現在の仕様のPAM IIIは約1200万円.このため当初の20台の配備は諦める.と
 りあえず8台.これには開発費等の初期投資部分が入っているので,次回購入
 分からは安くなる.例えばGMS転送装置については200万円のうち150万円が開
 発費の初期投資部分である.
 
 5-c. 気象研による科振費によるタリム盆地南部のオアシス周辺でのAWSに
 よる自動観測と日射量放射量の観測(三上)
        上記の内容について紹介がなされた.
                   
  
 6.総合討論
 *各地域での測定内容、様々なユーザーの要求をふまえ、地表面観測として
 以下の項目を最低限のプロダクトとして出せるようにするべきであることが
 確認された.
 
 ・10ー50kmスケールを代表する場所での測定であること.
 ・プロダクト
              (1)フラックス:顕熱、潜熱、地中熱流量、(運動量)
              (2)放射:正味放射、(放射4成分(上向き+下向きの赤外+日射))、
               (地表面温度)
              (3)一般気象:気温、比湿、気圧、風速、風向、地温(2ー3深度)
              (4)水文:土壌水分、降水量、(積雪深)
              (5)植生:(LAI)、高さ、(気孔抵抗)
              (6)土壌:三相構造、透水係数、水分特製曲線、熱伝導率など
              (7)マニュアル観測:(日雨量)、(アスマン)
              (8)その他:観測日誌、写真撮影
 
              -(1)-(3)は30分から1時間の間の平均値が必要.(5)は季節変化がとら
               えられる頻度での測定.(6)は1回測定すればok.(7)は現地に人がい
               て実際に測定がなされているのならデータの取得につとめる.
              -(1)は精度として20W・m2程度を目指す.測定法、推定法はその内
               容の記述がちゃんされてさえすれば、問わない.
              -(3)の測定高度は設置国の標準に合わせる.地温は恒温層とその上2点
               程度で計る.
              -(4)土壌水分は連続観測による相対的な変化のモニターに重点を置く.
               面的な広がりでの代表製の問題は、集中観測時における短期広域サンプ
               リングなどを考慮する.
              -(5)(6)はできれば1つのチームが各サイトを回って同一の方法で評価す
               ることを検討する.
 ・観測は1997年頃からスタートして少なくとも2ー3年の連続したデー
 タ取得を目指す.データ公開は観測から一定期間内に公開できるようにする
 べきである.
 ・地上観測一般にプロダクトの内容は上の項目を満たすようにつとめる.さ
 らに観測期間とデータ公開の原則が満たされる物をAANのステーションとして
 いちずけ、長期観測のための金銭的サポートを行う.
 ・例えばIGBP-NESのグループとのデータ交流も検討されるべきである
 
 参加者リスト
 安成 哲三  筑波大学地球科学系
 鈴木 雅一  東京大学農学部
 林  泰一  京都大学防災研究所
 塚本 修   岡山大学理学部
 石川 裕彦  京都大学防災研究所
 萩野谷 成徳 気象研究所
 矢吹 裕伯  名古屋大学大気水圏研究所
 上野 健一  滋賀県立大学
 高田 久美子 国際農林水産業研究センター
 大野 宏之  国際農林水産業研究センター
 山崎 剛   東北大理学部
 川端 健一  英弘精機
 中根 和郎  防災科学技術研究所
 三宅 行美  英弘精機
 早坂 忠裕  東北大学
 千村 隆宏  東京農工大学農学研究科
 青木 正敏  東京農工大学農学部
 鈴木 力英  筑波大学地球科学系
 宮崎 真   筑波大学地球科学研究科
 李  越豪  筑波大学地球科学研究科
 竊  麗坤  筑波大学地球科学研究科
 周  啓友  筑波大学地球科学研究科
 田中 正   筑波大学地球科学系
 大畑 哲夫  滋賀県立大学
 小池 俊雄  長岡技術科学大学
 開瓣 一郎  広島大学
 田中 克典  京都大学
 瀧獪 英紀  日本大学
 杉田 倫明  筑波大学地球科学系
 熊倉 俊郎  長岡技術科学大学
 広田 知良  北海道農試
 大手 信人  京都大学
 田中 賢治  京都大学
 水谷 完治  森林総研
 田  少奮  筑波大学