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Date:  Mon, 24 May 1999 15:53:38 +0900
From:  Taikan_Oki <taikan@iis.u-tokyo.ac.jp>
Subject:  [game-jp:0047] Report from GPCP Users Workshop
To:  game-jp@ihas.nagoya-u.ac.jp
Message-Id:  <199905240655.PAA12689@rain.iis.u-tokyo.ac.jp.>
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game-jp の皆さま: 地球フロンティア研究システム(兼任)の沖です。

GPCP User Workshop というのが5月の連休明けにありましたので参加してきました。
その際の感想を手短にご報告申し上げます。

・NASA/GSFC に於て、1 degree daily data set のプロトタイプの作成が始まって
  いる。当面は1997年1月1日以降。データの取得は今の段階では個人的にコンタク
  トするしかない。これを0.5度以下の空間解像度になるのは、相互交換している
  静止軌道衛星データの解像度との関係ですぐには難しい。この高解像データには
  現時点では地上雨量計データはマージされておらず、衛星データのみから推定さ
  れている。

・GAME の様な短期間のデータセットには、GPCP からの期待はあまりない。既に
  降水推定アルゴリズム検証の段階は終ったが、それでも、高緯度の精度の高い
  地上検証降水量データがあればそれはそれで役に立つ。

・沖はGAME領域のデータの利用可能性、収集取得状況や今後の計画について紹介す
  るとともに、水収支的な観点からグローバルな降水量データの精度検証を行なっ
  た結果を示した。特に、インドシナ半島北西部のビルマ/インド/バングラディッ
  シュ国境付近の降水量が真値よりもかなり低く見積もられているのではないか、
  という指摘に対しては、データ制作者の一部から、実はそういう認識があって現
  在過去のデータに遡って改善を検討中である旨コメントがなされるなど、注目を
  集めた。当該領域は長期間降水量の世界記録を持つチェラプンジが含まれる地域
  であり、また、インドモンスーンの指標ともなる領域でもあり、今後の推移を注
  意深く見守る必要があると思われる。

・ベンガル湾のデータ精度向上には INSAT の IR データが不可欠である。その取得
  のための努力は続いている。

・全球降水量の経年的な増加が温暖化に伴って(?)見られるかどうかがひとつの興味
  だが、現在の GPCP ではそれを有意に探知できるほどの精度はない。

・GPCP に対する日本の貢献が現時点では GMS データの受信・提供しかない。一方
  で、各種衛星センサから求めた降水量推定値やグリッド化された地上雨量計デー
  タはプロジェクト内で交換されているので、日本からも積極的に取り組んで、新
  たなアルゴリズムやマージ手法を提案する研究者が出てくるのが望まれる。

・一般に、時空間解像度を上げるとランダム誤差が増大するが、細かい時空間分解
  能に対するユーザコミュニティからの要望は根強いものがある。今回のワークシ
  ョップでも、必要精度と必要分解能との目的ごとの明確化が非常に強く求められ
  ていた。月単位、緯度経度2.5度メッシュ、という当初の設定で今も良いかどうか
  という点である。

・現状に加えて、グリッド内の降水面積割合、および、月降水量に対して降水頻度
  などといったサブグリッドスケールの情報も加えて欲しい、という要望がまとめ
  られた。これに対して、GPCP データ提供側からは、信頼度などの付加情報も利用
  して欲しいという要望が出た。

・GPCPのプロダクトを利用して LSM を off-line で動かし、土壌水分量分推定して
  それを陸面境界条件に用いることにより、降水季節予報が向上するという研究発
  表がまたあった。また、一方で、通常の大気の同化システムと平行して観測降水
  量を用いて陸面同化システムを走らせて大気用の土壌水分分布を与えるシステム
  の途中経過報告もあった。この様に、土壌水分という観点からも精度の良い降水
  量観測が求められている。

・グローバルデータを利用する際には、現段階ではやはりデータがいかに作られた
  かに注意する必要がある。例えば、IR に基づく GPI (GOES Precipitation Index)
  が使われているところと使われていないところでは成果物の統計的性質が異なっ
  ている可能性がある。また、統計的性質と言った場合、平均値だけではなくて変
  動成分などが現実とどの程度対応しているかにも目が配られる様になっていた。

・また、New Hampshire 大学の simulated topological network (STN-30p)のグル
  ープと会合を持ち、グローバルな河川流量データベースならびに世界河川流路網
  に関する現状の意見交換と、今後の協力関係について長時間にわたって話し合っ
  た。0.5度版の河川流路網と流量データを GRDC と共同で publish するそうだ。
  彼らの地理情報toolはglobal river channel networkの開発に特化していて、な
  かなか良くできていた。やはり、新規研究にはtoolの開発が欠かせない。

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